保護者の皆さまへ「次世代につなぐ震災からの学び」

東日本大震災から10年。「あの日」から今までに得た多くの学びを、 次世代を担う子どもたちに伝えるために、本作『きぼうのとり』は企画制作されました。

問われる自助・共助・郷土愛

大地震の記憶が薄れようとしている中で、本作『きぼうのとり』の登場人物(小学四〜五年)より年下の世代、震災以降に生まれた子どもたちへの震災体験の継承が課題になっています。本作は、そんな震災を知らない世代に向けて、何が起こったかを知る入り口になればという着想から企画されました。また、日常から災害に備える「自助」、災害や復興に周りの人たちと助け合う「共助」も主題になっています。自助・共助を絵本を通して感じてもらい、命が危険にさらされた時の行動を想像してほしいと願っています。自助・共助を育てる土壌には、人とのつながりが不可欠です。地域の自助・共助の大きな広がりが「郷土愛」と言えるのではないでしょうか。その延長上に防災意識が芽生えると考えました。震災の記録や学びとともに、郷土愛が心の大きな支えとなったことも、子どもたちへ継承できればと思っています。

次世代への継承と防災への活用

そして、震災から得た学びを生かす時は、遠い未来ではなく、現在の暮らしそのものになってきました。全国で頻発する地震のほかにも、気候変動による異常気象や豪雨、そして新型コロナウイルスによる生活様式の変化など、天災はいつどこで降りかかるか分からないことを、人類はまざまざと感じさせられています。だからこそ、震災から得た学びを大人だけでなく、子どもたちにも分かりやすく伝え、今すぐにでも活用できるようにすることが、この世界を生き抜くために必要なのです。このことは福島県の子どもたちに限らず、日本全国、そして世界の子どもたちにも当てはまります。そんな厳しい現状の中でも未来を切り拓いていく子どもたちに、防災への学びの入り口や震災体験の継承の一助となるべく、大人たちと一緒に本作を読んでいただき、豊かなコミュニケーションをとってほしいと思います。